原価は,普通行なわれているように,直接に製品やサービスについて計算されるべきではなく,それを生じさせた「活動」に対してまずは集計されるべきであるとして,その「集計」の手続きを詳しく考察した前稿を引き継いで,本稿では,集計された原価の「配分」の問題を取り扱う。すなわち,ひとたび活動に集計された原価は,とくに原価計算制度にあっては,すなわち,原価計算が複式簿記勘定機構と有機的に結合して行なわれる場合には,これをそのまま活動にとどめておくことはもとよりできず,どこかにその行き場を求めなければならない。幸い,活動からは出力が生じている。原価は,そこで,これをこの出力に転嫁し,これに負担させるのが,妥当である。しかも,ひとつの活動からは,普通,さまざまの出力が生じうるから,活動に集計された原価は,これらの出力の間に配分されることを必要とする。いま,これらの出力の例として,当期完成品と期末仕掛品,等級製品,連産品,副産物,作業屑,仕損・減損を挙げることができる。しかし,実際のところ,集計原価のこれらの出力の間への正確な配分は,しばしば非常に困難であり,ために便法が講じられるのをみる。また,直接原価計算や標準原価計算にも,原価の配分を見出すことができる。なお,最後に,原価計算の基本構造に関するわれわれの理解の仕方と,普通一般にみられるそれとを,整理し,比較する。
|