戦後のいわゆる消費関数論争が起ってからほぼ30年の歳月が流れた。論争の過程で様々な仮説が生まれたが,大きく分けて2つの仮説にまとめられよう。一つはKeynes-Tobin-Friedman-Modiglianiの系譜で,一つはDuesenberry-辻村-佐藤-Houthakker=Taylorの系譜である。両者の相違点は選好場の内生的な変位を容認するか否かにあったが,現在においてもその最終的な決着がつけられたとはいえない。その最大の理由は実験計画にあるといえる。消費関数論争の論争点は選好場の内生的な変位の有無にあったが,辻村-佐藤を除き,陽表的に選好場を特定化(specify)していない。つまり辻村-佐藤を除き,選好理論の解釈で止まっており,従って選好場に関する最終的結論と直接的な結びつきが弱く,最終的な判定があいまいになっている。そしてそのために両系譜の理論の有効性に関して決着のつかないまま並存しているのが現状である。本研究では実験計画のしっかりしている辻村-佐藤の習慣仮説に基き,分析方法としてパレートの一般均衡型消費者選好理論を適用して,昭和30年代および昭和40年代の消費構造の変化を分析したものである。第1章において数学模型とデータに関する議論がなされる。第2章において計測された選好関数が示され,外挿テストによって選好パラメターの安定性が吟味され,選好パラメターを使って,限界効用曲線,各費目の必需度,消費需要関数と弾力性および潜在需要と理論的物価指数の導出がなされる。この研究では貯蓄の決定は行われず,消費支出合計をどのように各費目に配分するかという点を明らかにすることにある。
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