経済近代化,あるいは一般に近代化(Modernization)という用語は,聞き慣れて久しい気がする。しかし,後進国の経済的自立のためには,その経済の近代化を図る必要があると考えられるに至ったのは,比較的最近のことといえよう。植民地諸国は独立達成後,経済的自立をめざし経済発展政策を採用したがその成果は思わしくなかった。植民政策に替って登場した後進国経済開発論も,50年代後半には,新しい方向を模索せざるを得なくなった。そのころ,アメリカの日本研究者の間で,日本の近代化過程を総合的に研究しようという機運が高まった。この動きは,しばらくして,日本の近代化の成功の経験を,停滞している後進国の経済発展に役立たせることはできないだろうかという関心を産んでいった。一方,後進国経済開発論の側からも,後進国の経済的自立の方策をたてるには,近代化という概念が有効かも知れないという期待がうまれてきた。それは,後進国開発理論がより実践的性格をおびてきた結果であった。後進国の経済開発を近代化の視点より考えていく議論を,ここでは後進国経済近代化論とよぶ。それは,近代化論の経済面なる一分野であると同時に,後進国経済開発論のひとつの新しい分野であるという,インター・ディスィプリナリーな性格をもっている。この小論は,後進国経済開発論のなかに近代化という視点が,どのような経過をたどって,いつごろ芽ばえてきたのかを,ふり返って見ようとするものである。それは,後進国経済開発論を近代化の概念をつかって再構築しようとする試みの,基礎作業のひとつである。
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