近年の少子高齢化による労働人口減少とIT技術の発展，AI市場の発達に伴い，国内ロボット市場は大きく拡大しており，今後もサービスロボットや協働ロボットなどの新たな分野のロボット市場を始め，ロボット市場全体として更なる拡大が見込まれる。そのような状況下で，中小企業が大企業に対して競争優位性を獲得するためには，中小ロボット製造会社の強みである機動力と対応力の高さを活かし，オーダーメイドの新製品開発を進める必要があると考える。しかし，現状で新製品開発が売上高向上に繋げられていない中小ロボット製造会社については，製品開発に関わる従業員の発案の精度が低いことや，従業員の新製品開発に対するモチベーションが低迷していることが原因と言える。
そこで，リーダーシップ論の内，組織内のコミュニケーションにより創発される心理的安全性の向上とインクルージョンの認識から，従業員の組織における業績を高めるというインクルーシブ・リーダーシップ論に着目した。本稿では，インクルーシブ・リーダーシップの実践により，新製品開発が促進され，その開発力の向上を源泉に業績が向上するという仮説を立て，実証分析を行った。
分析方法として，中小ロボット製造会社699社にアンケートを送付し，得た94社のサンプルに基づき統計分析を行った。分析の結果，組織内のコミュニケーションがインクルーシブ・リーダーシップの効果を促進させ，さらにインクルーシブ・リーダーシップが開発力を向上させるという仮説が立証された。さらに，アンケートを送付した中小ロボット製造会社の内3社に対してヒアリング調査を行い，統計分析の結果を裏付けた。

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