2019年に中国の武漢で発生した新型コロナウイルス (COVID-19) は，パンデミックを引き起こした。これを受けて各国政府は緊急事態宣言やロックダウンと呼ばれる国民の外出規制を行う対策を実施した。その結果，各国における移動量は著しく低下し，コロナウイルス感染拡大の動きは鈍化した。しかし，その対策強度は国ごとに異なっており移動量の変化についても国ごとに大きな違いがみられる。そこで，本稿では国民の移動量に影響を与えた要因について分析を行った。また，社会経済的要因として各国の国民性が移動量にどのような影響を与えていたかについても分析を行った。その結果，以下の3つのことが分かった。1つ目は，ロックダウンをはじめとするコロナウイルス対策が国民の移動量を減少させることである。2つ目は，感染者数や死者数の情報を基に，自主的な移動制限 (外出自粛) を行う人が一定数存在していることである。3つ目は，不確実性回避や個人主義，長期主義といった国民性が政府のコロナウイルス対策の効果を左右し，移動量に影響を与えていることである。

論文