【目的】本研究の目的は, 日本国内で作成される, 日本人名・日本の団体名に関する著者名典拠データの構造や内容を分析し, 『典拠データの機能要件(Functional Requirements for Authority Data; FRAD)』を日本の著者名典拠データに適用する上で課題となる点を検討することである。
【方法】まず, FRAD適用の要件として, 日本の著者名典拠データに(1)国際共有のために典拠レコードに含めるべき要素を定めた, Mandatory Data Elements for Internationally Shared Resource Authority Records(MLAR)の必須要素および推奨要素が含まれていること, (2)FRADの属性, 関連の中で, 既にFRADへの対応を済ませたUNIMARC典拠フォーマット, MARC21典拠フォーマットが採用しているデータ要素が含まれていること, (3)前記(2)の各データ要素を入力可能なフィールドが存在すること, の3要件を設定した。次に, 日本国内で典拠ファイルを作成している6機関の典拠フォーマットおよびマニュアルを収集し, 各機関が典拠ファイルに記述している典拠データ要素を抽出して, UNIMARCおよびMARC21フォーマットに採用されているデータ要素とのマッピングを行い, これら3要件を満たしているか検討した。
【結果】国内の著者名典拠データは, (1)の要件はほぼ満たすが(2)と(3)の要件は満たしておらず, FRAD適用のためには, 実体「個人」, 「団体」の属性, 異なる実体間の関連や, 関連の種類などのデータ要素, ならびにこれらを入力可能なフィールドを採用すべきであることが明らかとなった。さらに, 日本の典拠データに含まれるが, UNIMARC, MARC21フォーマットには採用されていない日本独自のデータ要素も明らかとなった。
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