【目的】本研究の目的は, 一般の人々が情報探索行動をどのように開始するのか, そのメカニズムを明らかにすることである。情報探索行動の探索過程に注目した研究は多数ある一方で, その過程がどのように始まったのかに注目した研究は数少ない。本研究は人々が情報探索行動を開始するまでのプロセスを詳細に分析することで, そこで働くメカニズムを明らかにした。
【方法】2005年の7月から10月にかけて, 自分や家族のために医学・医療に関する情報を探した経験のある7名を対象としたインタビュー調査を行った。参加者は情報探索行動の概要と, なぜ, どのように情報探索行動を開始したのかについて回答した。本論文では参加者7名のうち, 内容の公開に同意した3名分の事例を分析した。
【結果】情報探索行動の開始メカニズムは, 「きっかけ」の発生, 課題の設定, 情報源の選択, の3段階によって成り立っており, これらをつなぐものとして文脈の活性化が存在した。まず「きっかけ」の発生によって文脈が活性化し, それによって, 課題の設定が促される。つぎに再び文脈が活性化して情報源の選択が促される。最後に具体的な情報源の選択が行われることで, 情報探索行動は開始に至っていた。人が情報探索行動を開始するにはこの3段階を必ず通る必要があり, 各段階に進むためには, 文脈の活性化が不可欠であった。
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