令和2年度は未曾有のコロナ禍の影響により、本来であれば江戸時代中期の公卿・近衞家久の自筆和歌資料を調査するために、ほぼ一と月に一度の割合で公益財団法人 陽明文庫（京都市右京区）へ伺いたかったのであるが、これを行うことは叶わなかった。
しかし、これまでに調査を行ってきた日記・文書類や和歌詠草に基づき、家久の誕生から没後の影響までを含む年譜の作成に取り組んだ。勿論、未見の資料は少なからず残されたままであるが、現時点で他には存在せず、しかも最も詳細であると断言できる内容の年譜を完成させ、慶應義塾大学国文学研究室が発行する『三田國文』第65号に発表した（162ページから221ページまで）。また、近衞家の歴代当主のうち、信尹、家凞、家久の自筆資料を入手したが、特に家久の和歌詠草は、記録ではその名が知られるものの実際にはその存在が長らく不明であった貴重な資料であることが判明、直ちにその内容を上記年譜稿に反映させることができたのは極めて幸いであった。
本研究の計画では、まず『近衞家久公御詠草―翻刻と研究―』（仮題）を上梓することにあったが、上記の通り本年度は思うような調査を行えなかったため、今後も継続して行っていく。また、詠草の出版に先立つ形で発表するとした家久の詳細な年譜は、前述のごとく無事に刊行することができた。
Because of the influence of Corona, I couldn't go to the YOMEI Library in Kyoto. Therefore　In this year's research, I was able to create and publish a chronology of Iehisa KONOE, who was one of the nobles of the Edo era, based on the information that has been investigated so far.