現代中国の航空交通管制とその安全保障政策との関係について、前年度に引き続き研究を進めた。今年度は、中国青島空港をめぐる航空交通管制の状況を実地に視察し、中国における航空関係者から意見や状況を聴取した。また、航空会社の協力を得て、ライン運航に当たり実際の航空交通管制がどのように行われているか、航空無線を傍受する等のことからその実態を観察した。
中国青島市では、新しい国際空港が建設され、すでに供用可能な状況になっているにもかかわらず、近接する中国空軍基地が何らかの影響を及ぼしているため、その開港が遅れていることなどが明らかとなった。それと同時に、現用の青島空港の利用状況が極めて活発であり、中国の経済成長にとって大きな役割を果たしていることも明らかとなった。
それらのことにより、中国では航空交通管制がまだなお軍事建設に大きく左右されているとともに、しかし民間経済成長という観点から、軍事も民間との協調関係を築かなければならなくなっていること等が推察された。こうしたことは、今後の中国の安全保障政策を分析する上で非常に有用な視点を提供するとともに、それを視野に入れた日本の安全保障政策が策定されるべきであるとの結論に至った。また、日本の航空交通管制の地位や果たす役割について、安全保障上の考慮や措置が施されることは有意義であるという展望が得られた。
・Air Traffic Control at Qindao airport, China
・China's security policy and Chinese Air Force power toward China's air traffic control system
・The relationship between air power and civil aviation