3年計画の2年目である2018年度は、スペイン語で単著の本の草稿を執筆することを計画していた。しかし、年度の前半に執筆が予定通り進まなかったため、計画を変更して、スペインの学会誌に投稿する論文を1本まずは執筆することにした。
この論文は、チアパス地方（現メキシコ南部）の5つの村落の先住民が支払った貢納の収益の一部が、エンコミエンダという制度を介して、ディエゴ・ベラスケスの絵画『ラスメニーナス』に描かれている女官の一人であるイサベル・デ・ベラスコの葬儀の費用の一部にあてられていたことを、一次資料から実証するものである。これによって、17世紀中葉の中米の先住民の貢納の収益の一部が、スペイン本国のマドリードの貴族によって消費されていたことを具体例で示し、当時の中米の先住民が、大西洋を越えて張り巡らされた政治経済の網の目のなかに組み込まれていたことを主張することを目指している。また、『ラスメニーナス』の女官の一人イサベル・デ・ベラスコは、この政治経済の網の目を象徴する存在として解釈できることを主張する予定である。
現在は、この論文の第一稿を書き上げ、メキシコ植民地時代史を専門とするメキシコ大学院大学のフアン・ペドロ・ビケイラ教授のアドバイスの下、加筆修正を行なっている。2019年度の前半には、スペインの学会誌（美術史分野）に投稿することを目指している。
In 2018, the second year of the 3-years plan, I wrote a draft of an article in Spanish. I will submit this paper to a Spanish journal in 2019.