現在, 細胞組織をin vitroで作製し, 生体内に移植して治療効果を促す再生医療が新たな治療法として検討されている。しかし, 代謝活性が高い細胞組織を移植する場合, 移植した細胞組織への酸素供給が不足し, 細胞組織が壊死を起こす可能性があり, 効果的な細胞移植とならない可能性がある。そこで, in vitroでの細胞組織の作製段階で, 予め血管網を付与しておけば, 細胞組織移植時に効果的にホスト組織の血管と吻合し, 細胞組織への血流供給を促す事で酸素供給を行い, 移植組織の生着を促すことが可能になると考えた。
そこで本研究では, 心筋細胞組織のin vitroでの血管新生を目的とし, 心筋細胞組織作製時に血管内皮細胞増殖因子(VEGF)を徐放する材料を培養系に配置し, 血管網構築状態を観察した。VEGFを徐放する材料として, in vivoで積層化心筋細胞シートへの血管新生の促進効果が確かめられているポリ乳酸-ポリグリコール酸共重合体(PLGA)のナノ粒子にVEGFを封入し, ポリビニルアルコール(PVA)からなるファイバーマットに担持したものを用いた。ラット由来の心筋細胞を温度応答性培養皿に播種し, 細胞シートを培養する過程でVEGFを徐放するファイバーマットを培養皿に添加し, 血管内皮細胞の増殖, 血管網構築を観察した。その結果, VEGFを徐放するファイバーマットを用いた場合と, VEGF徐放ファイバーマットを用いない場合で, 血管内皮細胞の増殖, 血管網構築において有意な差が確認できなかった。この原因として, in vitroでのPLGAの分解速度が遅くVEGFの徐放速度が遅い事, in vitroでの血管内皮細胞の増殖がin vivoに比べて遅いため, より多くのVEGFが必要となる事が考えられる。これらの結果からin vivoでの血管網構築における適したVEGF徐放速度を有するPLGA粒子の設計指針を得た。
In the present study, enhancement of vascularization in cardiomyocyte tissue in vitro was investigated using VEGF releasing fiber mat. In the fabrication of cardiomyocyte sheet in vitro, VEGF releasing fiber mat was added in the cell culture medium, and vascularization in cardiomyocyte tissue in cardiomyocyte sheet in vitro was observed. However, there is no significant difference in vascularization in cardiomyocyte sheet between with and without VEGF releasing fiber mat. This is probably because the VEGF releasing from fiber mat was insufficient for vascularization in vitro. The result indicated that VEGF releasing materials should be improved by increasing amount of loaded VEGF and accelerating VEGF releasing rate in vitro.
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