2003年は日本のCSR元年と言われている。CSRの認知度は大きく向上し, それを知らない経営者・ビジネスマンはいなくなったのではないだろうか。大学の授業でもCSRを取り上げる機会が格段に増えている。しかし, CSRとは何であろうか?
CSRはCorporate Social Responsibilityの頭文字なので, 企業の社会的責任だ, と言えば確かに正解と言える。しかし, 企業は自らの社会的責任を考えた時, どの様に行動すれば良いのであろうか。どの様に責任を果たせば良いのであろうか。それは企業にとってプラスなのであろうか。そもそも企業の社会的責任の責任とCSRの責任は同じなのであろうか。
これらの問いに答えることは簡単ではない。経営者の方に伺っても, 現場のビジネスマンに伺っても, そして学者仲間に聞いても, いろいろな答えが返ってくる。社会的責任, CSR, 戦略的CSR, CSV, そして三方よしなど, 類似概念がたくさんあって, 非常に難しいことになっている。それぞれの言葉が生み出された時代背景, タイミング, 意義, 捉え方がバラバラで, しかも確固たる定義があるわけではないものも多い。
本書ではこれらをひとつひとつ取り上げ, 時代背景と意義を確認し, さらにお互いの関係を考え, 企業が社会と向き合う際, どのような関係を築いていくべきかを考えるヒントを提供してみたいと思っている。そこでそれを歴史的に, 理論的に, 実証的に検証していく。最後の実証では, CSP-CFP関係(Corporate Social Performance vs. Corporate Financial Performance)と言われる企業の社会的行動の成果が企業の財務業績にいかなる効果をもたらすかに関する, 筆者の20年にわたる実証分析結果を示し, これがどの程度のプラスの貢献となっているかを確認している。
【拙著『社会的責任とCSRは違う!』(千倉書房, 2018予定)の紹介文より】
The concept of CSR (Corporate Social Responsibility) has been widely investigated, however, there are many kinds of understandings and a generally accepted definition does not yet exist.
In this study, several notions concerning corporate social responsibility, such as CSR, CSV, Strategic CSR, and Japanese-Sanpo-Yoshi are discussed historically, theoretically, and empirically.
Finally, CSP-CFP relationship (Corporate Social Performance vs. Corporate Financial Performance) is analyzed, using 20-year follow-up survey data, and the extent of positive relationship is empirically confirmed.
|