癌の診断に有用な血中腫瘍マーカーは,癌の選別や予後の予測,経過評価,特に再発診断,化学療法など,治療効果の評価への可能性に期待が寄せられている.しかし胃癌をはじめとする多くの癌は組織型が混在しているために,癌種ごとに特異的で感度の高い腫瘍マーカーは殆ど同定されていない.現在タンパク質レベルでの測定可能な胃癌血中マーカーとしてCEA, CA19-9などがあるが,感度・特異度が低く,早期診断に用いるには不十分である.そこで本研究では胃癌の早期診断マーカーの発見に向けて,感度が高く胃癌に特異的な腫瘍マーカーを探索することを目的として,血中代謝物質の解析を行った.キャピラリー電気泳動一飛行時間型-質量分析計(CE-TOFMS)を用いて,健常者群(n=11)と術前(n=17)・術後(n=12)の胃癌患者群血清中のイオン性代謝物質を比較解析し,その変動を調べた-その結果代謝物質由来のピークを286検出することができ,健常者群と術前胃癌患者群問において25個,術前胃癌患者群と術後胃癌患者群間で24個の物質に有意な差(P0.05;Student t-test)が認められた.これらの物質のうち,特に有意性の高いものとしてX3(P=5.81×10'4)とX1(P=8.58×10'9)があった.この2物質は健常者群と術前胃癌患者群それぞれの血中で逆の変動を示していた,これを術後胃癌患者群の血中代謝プロファイルとも比較した結果,この2物質の血中でのレベルは健常者群のそれとほぼ同等となっていたことが分かった.以上のことからX3とX1を媒介する酵素PNPと胃癌の発症との関連が示唆された。
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