医療費の削減問題は長い間議論されている。しかし人の生命や健康の維持に直結する問題であり, 未だ踏み込んだ議論が出来ないのも事実である。医療の安全を確保し, かつ医療費を削減するという一見トレードオフとも思える関係を調和し, 医療機関の安定的運営を確保するためにはどうするべきであろうか。そこで本稿においては, 医療経営の実態を解明するとともに, 医療従事者の倫理に焦点を当て論じることとした。
近年においては, 医師と患者との関係変化, 医療過誤による訴訟の増加, 著しい医療進歩への対応等, 医師を取り巻く問題は山積している。
医療経営の合理化は必須であるが, その議論をする際に医療経営と医療従事者の問題を分離することである。患者は医師に対して, 経営のプロフェッショナルであることを求めてはいない。医師は「医療の専門家」として良質な医療を提供することに集中し, 経営は「経営の専門家」に委ね, 外部監査の実施により医療機関の透明性の確保を徹底することにより, 患者と医師と経営者の信頼関係が構築できる。そして医療分野において医師と患者等の「情報の非対称性」が存在する以上, 医療人は一般人と比し, より清廉高潔な倫理的水準を保持して行動することが求められると考える。
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