幕末, 日本が西洋諸国に倣って近代国家へと変貌を遂げ始めた頃, 遅ればせながら写真術が導入された。特に明治初期, 大きな港町や大都市を中心に広がりを見せ, 長崎, 横浜等では欧米人に加わり日本人も写真館を開き始めた。技術的進歩に伴い日本全国で次々写真館が開業され, 比較的裕福な階層の人々の間で肖像写真が撮られる様になった。当時, 写真館で撮影してもらう事が新しい時代の一つのシンボルであった。
本研究の目的は城下町として栄えた庄内地方, 山形県鶴岡市の最初の写真館の歴史をひもときながら, 写真師が我々に残してくれた非常に価値のある写真を通し, 激動の時代を生きた人々や, 町の歴史の一片を垣間見る事にある。