筆者は, 2007年から日本企業を対象に, 研究開発や製品開発についての調査を行ってきた。これまでは上場企業を対象として, 毎年二つの調査を行ってきた。2015年度からは, 非上場企業も対象として, 二つの調査を隔年, 交互に行うこととした。本稿では, 2017年11月に行った「研究開発に関する調査」のうち上場企業の結果を中心に, 11年間の変化動向・単純集計結果を紹介する。770社(上場企業350社, 非上場企業420社)に調査票を送付し, 204社(上場企業89社, 非上場企業115社)から回答を得た。2007年からの11年間(10回の調査)でトレンド変数が有意となったのは323項目中56項目であった。これら項目から, 「研究開発の高度化」「ユーザーへの評価, 対応の低下」「研究開発のオープン化の停滞と限界」「研究開発のインセンティブの変化」「海外でのR&Dの自律化と成果向上」「技術や品質の強化の一方での開発スピードの低下」など, 研究開発が困難になっていることがわかった。一方で, 「トップによる方向性の明示や, 信頼や公正さなど組織文化の強化」が進行している。2017年度は自社だけでなく他社との共生を目指す「エコシステム」についても質問したが, 自社独自のプラットフォーム設立, 他社への提供, 他社設立のプラットフォームの利用とも, 評価は低いことがわかった。
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