CSR元年と言われた2003年から10年が経過し, 企業の社会的責任(CSR)の必要性と重要性に関してはほぼ, 誰もが認めるようになってきている。しかしながら, 戦略との関係(受動的CSR vs. 戦略的CSR), また財務成果との関係(CSP-CFP 関係)に関しては, 多くの実証研究があるものの, なかなか明確な結論は得られていない。CSRと戦略ないし財務成果の関係を検証する際, モデル構造・因果関係の方向性・CSRの定義・成果変数との関係を媒介する各種要因の捉え方など, 様々な問題点が指摘されている。
本小論では, 戦略との関係を考察する際に近年特に注目されているトップ・企業全体のCSRに対する取組み状況に注目し, その財務成果との関係の分析を行なった。その結果, トップが積極的にCSR活動に取り組み, ある程度以上の人員を投入して戦略的に取り組むことが, 短期的にはコストアップになりCFPに対してマイナスの影響を及ぼすものの, 長期的にみればプラスに働くことを, 実証的に検証した。
This study revisits the CSP-CFP relationship issue. The empirical analysis, based on a sample of 1092 firm-years drawn from the Tokyo Stock Exchange, suggests that company-wide active CSR activities result in costs and the CSP-CFP relationship is negative in short term, but positive in the long run.
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