本稿では, 「中国産業別資本投入の推計(1)」の続きとして中国41産業の資本サービスの測定について報告したい。今回, 産業別資本サービスの測定に当たって, 理論的アプローチを確認したうえで, 資本ストックの再測定, すなわち, 資本財別資本ストックデータベースの構築をはじめ, 産業別付加価値や産業別労働賃金のデータ収集と推計, 資本収益率, 資本サービス価格などの指標の推計を行なう。先行研究などと比較して, 今回の測定はいくつかの特徴を持っている。
第1に, 資本財別資本ストックの測定を行なうことである。1996年以降『中国固定投資統計年鑑』では建物・設備・その他の三つに分けた固定資産投資種類のデータを発表している。本測定は既存のデータを用いてデータの欠落のある年についてRAS法によって測定する。
第2に, 農村部固定資産投資について調整を行なう。中国では, 産業細分類の固定資産投資データは都市部について発表しているが, 農村のデータはない。今回はいくつかの仮定を設けることによって農村部の産業別固定資産投資データを算出した。
第3に, 資本サービス価格の測定において現行税制度を考慮しないケースと考慮するケースの算出によって, 推計結果の比較を行なった。
本測定の結果を踏まえて, 次のことがいえると思う。まず, 資本投入は2001年を境界として, 急速に拡大していることが分かった。次に, 資本生産性は資本投入の増大に伴って, 2001年以降低下傾向に変化した。しかし, 非鉱工業は2001年以前でも, 資本生産性の低下が見られる。さらに, 推測期間において, 資本収益率も低下したが, 全41部門のうち, 電力やその他鉱石採掘業, 不動産などの数少ない産業を除いて高い収益率を維持している。また, 資本投入の質的変化に関しては, 全般的に低い上昇率しか見られなかったものの, 2001年以降資本サービス価格の下落に伴ってはっきりとした資本サービスの上昇が観察された。
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