【目的】英国では, ローカルガバナンスを実現するメカニズムとして, ブレア・ブラウン政権下において, 地域戦略パートナーシップ(Local Strategic Partnership, LSP)と地域協定(Local Area Agreement, LAA)の制度が導入された。本研究の目的は, 公共図書館の立場から, LSPとLAAの制度の導入の意義と問題点を明らかにすることである。
【方法】制度の全体的な枠組みに関する文献調査と, 関係者へのインタビューを含むDerbyshireとReadingを対象とする事例調査を行った。事例調査においては, LSPの組織構造,計画内容, LAAの指標選択の過程, 主要なパートナーと連携の内容, 財源, 評価方法, 図書館に関する指標(NI9)がLAAに採用されたことやLAAの制度全般に対する認識に焦点をあてて分析を行った。
【結果】LSPとLAAの制度を導入した意義として, 第一に, 政策目標としてNI9がLAAの中に選定されれば, 自治体経営において有利な立場を獲得できること, 第二に, それまでの制度に比べて経営の自由度が拡大したことを指摘した。
一方で次のような問題点があることを指摘した。第一に, LSPにおけるLAAの指標の選定の根拠や過程が不明瞭であること, 第二に, LAAにおいては具体的な連携内容まで規定するわけではないことから, 必ずしも戦略的連携を実現する構造になっていないこと, 第三に, LSPが地域の優先的課題として合意した内容と財源配分のしくみが連動していないこと, 第四に, LAAの制度のもとでは, 図書館分野の多様な利用の一端しか評価に反映できていないことをそれぞれ指摘した。
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