【目的】本研究では, 電子的情報源と物理的情報源が混在した短期大学図書館の日常的な情報環境において, 利用者が実際どのように情報源にアクセスし, 情報を評価し, 利用しているかについて, 実証的な観点から分析を行うことを目的とした。情報探索においては, 問題解決を達成するために必要とされる情報, またその情報を得るためにどのような情報源を利用するかを明確にすることが必要となる。本論では, 探索前に, 必要とされる情報とそれを得るための情報源を明確にすることが, 情報探索行動にどのような影響を与えるかを分析する。
【方法】短期大学生44 名を被験者に検索実験を行い, 図書館内での電子的・物理的情報源の探索過程を調査した。実験では, 被験者にレポート課題を与えた上で, レポート作成に必要となる資料の探索を求めた。その際, 「キーワード」および「情報源」を探索前に意識させる事前課題の有無により, 条件を操作した被験者グループを設定した。検証点は, 1)情報源利用の行動特徴とパターン, 2)探索前に「キーワード」と「情報源」を明確にした群としない群の行動比較, の2 点であった。分析に際し, 筆者らの先行研究における情報探索行動調査の結果との比較を用いて分析の一助とした。
【結果】「キーワード」と「情報源」を明確にした群としない群の行動比較において, 「キーワード」の明確化は, 検索行動に影響を及ぼすことが明らかとなった。事前課題によりキーワードの明確化を行った群は, 行わなかった群に比べて, 同じ時間により多くのキーワードを設定して実行し, Webに関してはより多くのページを閲覧した。情報源の利用行動では, 1)電子的情報源・物理的情報源のいずれにおいても利用に偏りが見られること, 2)探索の対象を変更する行動にパターンが見られること, が示された。
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