【目的】平成11年度より平成17年度末までにおこなわれた「平成の大合併」は3,232の市町村のうち, 1,968市町村が合併するという大規模なものであった。このような大規模な市町村の再編は, 公共図書館にも大きな影響を与えていると考えられる。本研究では, 日本の公共図書館にて合併時に検討された課題を調査することにより, 公共図書館の今後の課題を明らかにすること試みる。
【方法】『日本の図書館2005』に掲載されている日本の市町村立図書館の住所に基づいて, 市町村合併後の中央館を抽出し, 調査票を郵送した。抽出された調査対象は483館で, 回収件数は321館, 回収率は66.5%である。
【結果】市町村合併時に最も検討された課題は図書館の貸出冊数や開館時間といったサービス水準のすりあわせであった。このことからは, 合併までに時間がなく, サービス現場に直接影響の出るところから検討がおこなわれたことがうかがわれる。一方で図書館の運営方針の統一などはそれほど検討されていない。合併後の検討課題としては資料費の確保が最も多かった。また, 合併時にはそれほど検討されていなかった図書館組織についても, 多くの図書館において, 今後の検討課題としては挙げられている。合併によりサービス地域が増え, これらの地域に対して, 厳しい財政の中から効率的なサービス体制を検討しなくてはならないという図書館の意識もうかがわれた。サービスの統合内容の詳細な調査, 合併後自治体における運営方針, 運営体制などを詳細に調査, 分析していくことが今後の研究課題である。
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