本研究では, これまでの研究で開発したICレコーダによる音声分析システムとインターバルカメラを用いた産卵行動分析システムを使って西表島の固有種を対象に長期間モニタリングを実施した。対象種は準絶滅危惧種であるオオハナサキガエル(Odorrana supranarina)と絶滅危惧Ⅰ類種であるコガタハナサキガエル(Odorrana utsunomiyaorum)である。オオハナサキガエルのモニタリングにおいては, 沖縄県西表島東部の桑木山山麓にある繁殖地に12時間毎に繁殖地を自動撮影するインターバルカメラ3台と赤外線センサーで動物を捕捉して自動撮影するセンサーカメラ2台を設置し, 定期的に回収した画像データを分析した。一方, コガタハナサキガエルのモニタリングでは, 本種が繁殖している可能性のある浦内川上流部の調査を行った。調査地点は浦内川上流マリウドの滝までの8本の枝沢であるが, 同地へは日中に運行される観光船を利用する以外にアクセス方法がない。そこで3カ所の沢を選んで調査地点を設けてICレコーダを設置し, 毎日21時から10分間自動録音を実施した。さらに今年度は, 本来, コガタハナサキガエルが生息しないと考えられている低地の沢(上原地区)で本種の繁殖を目撃したという情報が寄せられたため, その場所にも同様にICレコーダを設置した。これらのデータを分析したところ, オオハナサキガエルには明確な繁殖期がなく, 渇水が続いた後, 日降雨量が40mmを越えると繁殖が始まることが明らかとなった。また, 浦内川サイトのデータを分析したところ, コガタハナサキガエルの鳴き声が11月以降の冬期に確認されたが, 何れもコーラスとは言えないレベルであった。一方, 上原地区のデータには, コガタハナサキガエルの鳴き声は入っていなかった。したがって, コガタハナサキガエルに関しては調査場所などを再検討する必要があると考えられた。
Greater tip-nosed frog (Odorrana supranarina)and Utsunomiya's Tip-nosed frog (O. utsunomiyaorum)are endangered and endemic to Iriomote Island, Japan. The long monitoring for these frogs was carried out using the sound analysis system by IC recorders, which I developed in my previous study. As a result, O. supranarina had no obvious reproductive season. It bred after heavy rainfalls (the amount of daily precipitation above about 40mm). On the other hand, the breeding season of O. utsunomiyaorum seems to be winter.
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